近赤外線スペクトロスコピー(INVOS 4100TM)を用いて測定したrSO2の正常人での検討

愛媛大学医学部麻酔・蘇生学教室
北村咲子、多保悦夫、惣谷昌夫、萬家俊博、足立尚登、新井達潤

近年、内頚動脈内膜剥離術や開心術など、術中に大脳への血流が変化する症例におけるモニターとして、近赤外線スペクトロスコピーを用いた持続的脳酸素飽和度測定の有用性が報告されている。しかし、その測定値は症例毎にばらつきが多く、絶対値として信用できるものかどうかは疑問が多い。今回、脳血管系に異常は認められないと推測されるボランティアおよびASA1〜2の全身麻酔症例でSOMANETICS社のINVOS 4100TMが示す脳酸素飽和度値(rSO2)のばらつきについて検討した。【研究1】ボランティア35名(22歳〜27歳、平均24歳)を対象とした。仰臥位でINVOS 4100TMのセンサーを前頭部の左右にそれぞれ貼り付け、room airおよび酸素マスク10L投与時のrSO2値を測定した。結果はroom airでの左rSO2値は65±8%(38%〜80%)、右rSO2値は65±9%(35%〜82%)で、酸素投与によりそれぞれ67±9%、69±10%に有意に上昇した。【研究2】ASA1〜2の全身麻酔症例38例(20歳〜83歳、平均59.8歳)を対象とした。麻酔導入後、ET-CO2値が35±2mmHgに安定した時点でINVOS 4100TMのセンサーを右側前頭部に貼り付けた。同時に右内頚静脈から採血を行い、rSO2値とSjvO2との相関を検討した。結果は相関係数0.17(p=0.31)で両者に有意な相関関係は見いだせなかった。【結語】INVOS 4100TMによる脳酸素飽和度値は正常人でもばらつきが大きく、絶対値としては信用すべきではない。



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