MP-100を用いた一酸化窒素産生量測定

筑波大学臨床医学系麻酔科
○渡辺和宏、斎藤重行、斎藤歌織、豊岡秀訓

 最近、微量な一酸化窒素(NO)の測定が可能となり、呼気中にNOが存在していることが知られてきました。NOは不安定な分子であり生体内では酸素と短時間で反応しNO2などの窒素酸化物になることが知られています。吸入気酸素濃度を変化させて、呼気ガスNO濃度を測定し、同時に換気量を測定記録したデータから一酸化窒素産生量の測定を行ったので報告する。
【対象および方法】健康成人(男5、女2、平均年齢30歳、身長169±9cm, 体重69±8kg, 喫煙者1名,治療中のアレルギー性鼻炎罹患者1名)を対象としました。半閉鎖回路の麻酔器を用い、毎分6lの定常流の仰臥位、安静マスク換気下に補助呼吸を行いました。被験者には可能な限り鼻腔を通して呼吸するように指示しました。吸入酸素濃度をFiO2、 0.21, 0.4, 0.6, 0.8, 1.0を無差別に設定、変化させ、それぞれ5-7分間程度の安静換気の後、マスクに装着したコネクターから呼気ガスをサンプリングレート150ml/minで採取しました。NO濃度(Vol/Vol)は化学発光法による測定器(NOA280, Sievers社製)を用いて測定しました。同時に呼気炭酸ガス濃度、換気量をAS/3麻酔モニターで測定し、自動記録計(Mac. MP-100, フィジオテック社)に記録し、測定解析に用いました。酸素濃度変更後5-7分後の呼気NO濃度の最大値を各10呼吸採取し記録し、呼気一酸化窒素量をMP-100の積分モードを用いて測定しました。
【結果】 40ppbの終末呼気濃度が得られ、吸入酸素濃度によるNO濃度測定値に差はみられませんでした。計算された分時呼出量は、0.1ml程度でした。
【考察】呼気ガス中には、ppb単位のNOが含まれていることが明らかになってより精密な測定が要求されています。今回使用したNOA280は、5ppb単位の精度を有し、90%応答速度が0.2秒と反応速度が速いため、Breath by breathでの呼気NO測定が可能となりました。 吸入気酸素濃度を無差別に変化させた本研究では、吸入酸素濃度の変化によって呼気NO濃度の測定値に影響を与えないことが明らかになりました。またMP-100を用いて呼気中の分時NO産生量を測定することができました。
 本研究は、呼気NO濃度と換気量測定から分時産生量をMP-100を用いて測定できることが明らかになりました。



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